今回は、SDGsがグローバル社会で重要なのは理解したけど、じゃあ地方では実際に何をしたらいいの?という疑問についてのお話です。
グローバルというワードが、日本で注目され始めたのは、おそらくインターネットが商業化し、世界中に普及し始めた1995年から2000年くらいのIT革命と言われていた頃ではないかと思います。
丁度その頃、日本の東北の農家のリンゴが、中国の富裕層にインターネットで高値で売れているという話をテレビで見た記憶があります。
その後、2009年頃にはアフリカで携帯電話の普及が進み、さらにインターネットによって、様々な情報が拡散することでアフリカの社会が発展し、巨大市場として注目される、アフリカの経済成長がスタートしました。この様な例は、グロ-バルの良い面だと思います。
このような例が起こる背景として、アメリカやヨーロッパにはもともと寄付文化があり、発展途上国の生活・環境・教育などに対して支援(寄付や投資等)するような、一時の利潤だけではない、未来につながる活動に対して高く評価されるという傾向にありました。
その様な企業に投資することを、E(環境)S(社会)G(企業統治)投資といいます。
逆に言うと、ESGに消極的な企業は嫌われる、または出資が集まらなくなる傾向があり、そのためグローバル企業はますます投資や寄付に力を入れるようになるという、良い循環が生まれています。
日本にも「情けは人の為ならず」という言葉があります。「これは人に情けをかけるとぐるっと回っていつか自分に帰ってくる」という意味です。
グローバルは、地方(ローカル)にとって良い面が多いように見えますが、実は負の面もあります。
一つに世界各国から多様な文化・産業が入ってくることで、元々あった地域の伝統産業が縮小してしまう可能性です。
例えば他国から、安価な磁器が必要以上に入ってきて、珍しがってみんなでそれに飛びついた結果、元々の伝統産業である陶器(九谷焼や瀬戸焼など)が廃れてしまう可能性などです。
もう一例、グローバルの恩恵を受け、自分が住む地域と地域外で、(インターネット等で)たくさんの商品を購入してもらったとして、それで稼いだ利益をすべて自身が住む地域以外の企業で、(インターネット等で)購入してしまうと、自分が住む地域に豊かさが循環せず、他国や他都市に流失してしまいます。
多くの人がこのように行動してしまうと、その地域の経済は縮小していくことになります。
もしも世の中に同じ物しかなくなってしまうと、それはそれでおもしろくありません。グローバルに多様な文化が持続できるよう上手く共存し、多様な選択肢があること自体は、文化的に豊かなことであると思います。
また、グローバル社会の現代では、消費する際に利便性や安さだけでなく、地域に豊かさを循環させる、バランスを考える必要があると思います。
持続可能な地域づくりのためには、グローバルに行動するだけでは良くないことも存在するということです。
ここでSDGsの話に戻ります。
日本全体としてのSDGsへの取り組みとスタンスはどうなのかといいますと、経済の面に関してはSDGsに取り組む中小企業等を後押しする仕組みづくりなどは、経済産業省を中心に取り組んでいます。
その中で注目したいのは、SDGsと地方創生を結びつける取り組みです。
地方がSDGsに取り組むことで、地方創生の課題となっている地方の人口減少・文化の衰退・地域経済の縮小等などの課題解決策につなげていくための、ガイドラインを示しています。
(SDGsを推進する都市を、SDGs未来都市に選定し、様々な支援をする仕組み等。)
しかし今回のテーマである地方都市や、中小企業や、一個人が、実際にどうやってSDGsに取り組むのかということが、SDGsの難解な点です。
その答えの一つとして、SDGs目標17のパートナーシップがあります。
誰も取り残さず、みんなで取り組む。行政・民間団体・企業・個人すべてが協力して問題を解決するという、具体的な指針は、今までのグローバルな取り組みにはなかった新しさです。
まずはSDGsは難しいという思い込みをなくすこと。
次にグロ-バルな問題について考えながら、地域で(身近で)自分たちができることを考えて、実際に行動することです。
デンマークのサムソ・エネルギー・アカデミー代表のハーマーセンという方の言葉で、〝「Think globally,act locally(地球規模で考え、地域で活動する)」ではなく、これからは「Think locally,act locally(地域単位で考え、地域で活動する)」ことが重要だと。なぜなら、地域の発展が各地で起これば、それがグローバルの発展につながるが、グローバルな発展が各地域の発展につながることは難しいからだと〟とあります。
出典:デンマークのスマートシティ データを活用した人間中心の都市づくり(著者:中島 健祐)
まさにその通りで、いきなりグローバルな活動をしようとすると難しく、結局寄付や投資、ボランティア活動という話になります。
日本の文化でもある、まわりまわって良いことが帰ってくる地域での「おすそわけ」の気持ちで、世界のために考えて、みんなでやる地域の活動が大切だということです。
世界の温暖化対策のために、化石燃料を使用せず、CO2を排出しない車づくりへの工夫を続けるトヨタなどは、大企業ではありますが、世界の為に自分たちができることを最大限に取り組んでいるのではないかと思います。
※今回のお話は以下の資料を参考にしています。詳細に興味がありましたらぜひご一読ください。
参考:2030年の世界地図帳 著者:落合 陽一
参考:持続可能な地域のつくり方 著者:筧 祐介
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