15分で読めるSDGsMEMO 17の目標で気になる事をまとめました。目標15~17まで

SDGsのはなし

SDGsは持続可能な社会を実現するための17のゴールを設定し、そこにいたるまでに169のターゲットとして方向性や手法を示しています。

SDGs活動では、ゴールに至るまでのストーリー(物語)を描いた方がいいと思います。つまり『私たちは持続可能の目標実現(17の目標のいずれか)に向けて、このような準備をし、このような活動を行っています』と表すことで、自分(自社)オリジナルなSDGsの活動になるということです。

今回はSDGsのストーリーを描くための材料となる〝点〟となる部分をメモ書き風に書いてみたいと思います。何かしら、ストーリーを描く時のヒントとなるかもしれません。

今回はSDGsで最も特徴的な、17.パートナーシップを含む、目標15~目標17をメモしていきたいと思います。
※あくまでメモのため、詳細は個別に確認ください。また、新しい情報があれば追記する場合があります。

15.陸の豊かさも守ろう

 

目標15は、目標14海の豊かさを守ろうと同じく、主に輸入による生物多様性への影響についてと、レッドリスト(環境省の絶滅危惧リスト)等の課題があります。さらに都市の砂漠化など、森林の保護も重要な課題です。

欧州で森林の木々は、石炭が主流となるまで火力として使われ、その時に多くの森が失われた歴史があります。また、大航海時代からは軍船や商船を作る木材が必要となり、多くの森林が消滅したとされています。しかしエネルギーの変化と共に、船は鉄製になり、木を使用することは無くなりました。

これまでは、経済成長と共に森林などの自然資源が危機を迎え、その度に技術革新(テクノロジー)で対応してきたのです。

現在は自然消滅に対して新たな問題が起こっています。世界で人口増加が懸念されている国の、都市化により〝コンクリート砂漠〟が増加しているのです。増える人口のために、マンションとオフィスビルの建設が進み、使用されているコンクリートには〝砂〟が含まれています。そのを確保するために、山や川の砂が持ち去られ、周囲の小さな島が消滅したりしています。

今後も人口増加は進み、中国・シンガポール・ドバイなどの高層ビルの建設だけでなく、東南アジアでも新たな建物が増えていくことが予想されます。

自然環境を保護するためには、まず森林の価値を知る所から始めるのが良いと考えられます。

森林は川や海を豊かにします。雨水が山で地下にしみ込み、森林の木々から栄養塩(植物の栄養となる窒素やリン)を吸収し、川を経由して海に流れ込み、水草の栄養となり、植物プランクトンを成長させ、海や川の魚たちを育みます。
(ただしプランクトンが多くなりすぎると、赤潮という水質汚染が発生してしまいます。)

そのため、森は〝海の豊かさ〟と繋がっている事になります。特に日本の様に周囲を海に囲まれた海洋国家にとって、森林はとても貴重な自然資源と言えます。

森林が根を張ることによって山の斜面の土壌は安定し、土砂災害を防ぐ効果もあります。
しかし近年の日本は林業が衰退し森林が放置され、山が荒れるという問題があります。間伐しないために木が細くなり、ある時に台風で大量に倒木し、電線を切断して大停電を引き起こすという問題が起こりました。

欧州で資源循環型経済(サーキュラーエコノミー)として、木材が活用されています。資源を再利用(リユース)することを前提に、ばらして組み替えすることで再利用できるような設計であらかじめ計画する取り組みです。

この様な工法はコンクリートではできません。この取り組みによって木材(自然資源)の価値を高め、資源再利用の活動を促進し、森林の育成を促し温暖化対策に繋がる一石3鳥の取り組みです。

現代はコンクリート製の建物が主流ですが、コンクリートは熱を吸収して蓄積してヒートアイランド現象を起こすことから、温暖化が進む現代では熱を吸収せずに、熱を伝えにくい木材建築が見直されています。

木材建築として近年活用されているのが、CLT(クロス・ラミネーティッド・ティンバー)という、木材を各層で互いに直行させて(繊維方向を変えて)接着した板材です。
これはコンクリートより軽いうえに、熱伝導率が低く、コンクリート並みの強度を持つという建築工法で、東京五輪の新国立競技場でも、一部採用されました。

日本の地方でも森林の価値を高めるため、木材に新たな価値を生み出すイノベーションが起こっています。

木質チップを使用したボイラーによる熱エネルギー〝バイオマス発電〟です。これは間伐材や木くずを使って生成された木質チップによる再生可能エネルギーで、従来の化石エネルギーを使用しないことで、資源の消費を抑えることに貢献しています。

これは自然資源を有効なエネルギー活用で、地域が地域内でエネルギー生み出す〝資源循環型経済(サーキュラーエコノミー)として地方創生の一翼を担っています。


森の価値を高めるには、資源としての経済的価値の他に、生物多様性に大きな役割を持つということを知ってもらい〝守りたい〟という気持ちを育むことが大切です。

発展途上国のある国で、熱帯雨林で生物多様性に富む地域を、焼いて開拓しゴムの木を植え始めるということが起こりました。これは国家が〝経済政策〟として行った国家事業で、ゴム産業の発展を目指したものです。

この経済政策によって国の雇用は増え、貧困への対策は進んだと言えます。また、産業の価値が高まることで、グローバルな支援によるインフラ整備が進みました。

逆に豊かな生物多様性は破壊され、森に住むアジアゾウの個体数は減少しています。さらにこの地域の農業は衰退してしまいました。

結果として国民はお金は稼げるが、米や食料を買うために常に生活が〝物価〟に左右される事で、必ずしも安定しているとはいいがたい暮らしになったといいます。

さらに熱帯雨林が失われて、ゴムの木ばかりが増えたこの地域は、自然資源によるイノベーションでの、新たな発展の可能性が損なわれた可能性があります。

ここで難しいのが、自然資源の持ち主は誰かというと、民主主義国家であれば本来は国民で、国家が管理することになります。しかし産業や生産は、資本(グローバル企業等)が担うため、自然資源は国の法規や統治(ガバナンス)がしっかりしていないと、資本に搾取され、略奪されてしまうのです。

分かりやすい例がガラパゴス諸島に属する島、エスパニョーラ島です。この島の西側3分の1はハイチ、東側3分の2をドミニカ共和国が統治しています。島は西のハイチ側の森林は失われ、東のドミニカ側は豊かな森林が残っています。
ハイチは政情が不安定で世界最貧国の一つとされています。その結果として島の西側の自然資源は失われてしまったという事になります。

自然資源は国民のものと言いましたが、もう少し言うと子供たち、未来の子孫たちのものでもあります。貧困を考えると、現代での経済成長は必要ですが、もし将来、生物多様性や豊かな自然資源が大きな価値を持つようになった場合、未来の子孫たちは過去の産業開発と自然破壊を大いに嘆く事になるかもしれません。

デンマークやドイツでは、森林などの自然資源に、自分たちの生活を豊かにする経済的価値と、精神的な豊かさをもたらす事を自然学習で学べるようにして、自然資源を守りたいという心を育む取り組みを行っています。

自然資源を残していくためには、国家として保全に取り組みながら、経済成長に活用する事で、持続可能に守り続けていく必要があると考えられます。


16.平和と公正をすべての人に

目標16には、争い(戦争)を無くすというSDGsの重要な目的があります。それは争い(戦争)が持続可能な社会に最も相反する行動と言えるからです。さらに関連する課題として、搾取・暴力・汚職・贈賄などの問題解決があります。

これらを解決するために重要と考えられるのが〝法規〟〝統治(ガバナンス)〟です。

なぜかと言うと、SDGsの目指す持続可能な社会には、資源、技術、法規のバランスが大切だと考えられるからです。

日本を例に考えてみると、〝資源〟化石資源の一部(石炭・石油等)が少なく、一部の国からは多くの物を輸入に頼る、自然資源の乏しい国とも言われています。その反面で、国土の7割が森林で、水が豊かな海洋国家であり、自然資源が豊かとも言えると思います。

技術〟に関しては、最先端のテクノロジーに優れ、リチウム電池や新幹線など、〝生産〟においては、新技術の開発や優れた商品を製造できますが、その一方で、パートナーシップがとりにくい〝縦割り〟の社会で、さらに〝前例〟にこだわる堅いところがあり、時には携帯電話の様に〝ガラパゴス〟と揶揄されることもあります。
それとともに、イノベーション(新たな取り組み)が起きにくい社会であるように感じられます。

〝法規〟に関しては、治安が良く、民主主義が浸透した安全な国で優れていると言えると思います。しかし、〝変化〟に関しては動きが鈍いように感じます。
欧州の北欧などでは〝ルールや規則は時代に合わせて変化するもの〟という考えが根付いていますが、日本では制度やシステムの改正に時間がかかり、グローバル社会で遅れをとる場合がある様に思えます。

このように日本はいい面と悪い面があるとはいえ、概ねバランスがとれているのではないでしょうか。
もし3つのバランスが悪い場合はどうなるかというと、先に挙げた様に、搾取・略奪・汚職・贈賄等起こり、それが〝テロ〟貧困・飢餓に繋がる可能性があります。

これまでの歴史を紐解くと、資源搾取と略奪から争いが起こる傾向があります。

例えば欧州は資源が乏しい国が多いため、産業革命時から重要なエネルギー資源だった石炭を、フランスとドイツが国境付近で奪い合った結果、戦争が起こりました。
そしてそのような争いを無くす意味もあり、現在の〝EU〟につながる組織が誕生したのです。

さらに古くは、船が進化した〝大航海時代〟に、香辛料や金・銀を求める世界各国が支援して行う〝大航海〟が行われ、その結果として、北アメリカ大陸の発見、そしてアジア・アフリカの植民地化が行われました。
これらは欧州の大国が、発展途上国に対して資源の搾取・略奪を行われる結果となりました。

これらの例からも〝資源〟が争いのきっかけとなり、〝技術法規〟が整っていない国で、搾取・略奪が行われ、貧困飢餓に陥ると考えられます。

昔と違って現代では国と国同士の争いについては、グローバル経済の発展と〝国連〟が機能することで起こりにくくなっています。

しかし、新たな問題が起こっています。国家と個人の争い〝テロ〟の脅威です。これはグローバルに起こり得るリスクであり、もはや国家間の物理的な距離は関係ありません。(米国とイスラム国の様に)

これからは個人が起こすテロ行為に対して、グローバルに適用される法制度が必要になってくるのではないかと考えられます。


さて、昔だけではなく現代でも搾取が行われている例はあります。例えばチョコレートを作るために必要な〝カカオ〟の生産では、子供の不法労働による作業が行われているといいます。そのため、一部の発展途上国では子供が学校に通う時間がないようです。

また、スマートフォンの材料である金・銅・その他レアメタルは、格安スマホの登場によって、世界中で需要が増えています。その鉱物資源は、アフリカのコンゴ民主共和国等で採取され、その様な国は政治的に不安定で、多くの紛争が起こっています。

法規と統治が整っていない資源大国は、それを悪用する勢力(武装勢力等)が生れ、略奪や搾取がはびこり、そこで活動資金を得ることで、テロ活動が行われるという負の連鎖が生れています。

また、豊富な資源があることが原因で、政治は腐敗し、経済成長も鈍るという説があります。
資源から得られる利益により税収が潤うことで、国の統治者は国民の税金を下げる傾向が多いと言います。(人気取りの為もある)

民主国家で公正な使い方が求められる、監視が厳しい国民の税金とくらべて、資源から得られる収入は監視が緩く、汚職・贈賄など使途不明な使われ方になりやすいとされています。

一方でノルウェーやカナダの様に、石油等の資源が豊富でも、法規と統治(ガバナンス)がしっかりしている国では、経済成長につなげることに成功しています。

これらの事例から、SDGsの目標16は、全ての国で不正行為(搾取・略奪・汚職・贈賄)を無くすことで、テロや不法労働を無くしていく事が目標であると言えます。


このような様々な不正行為への対策の、希望となるテクノロジーとして、〝ブロックチェーン〟が挙げられます。(ブロックチェーンは、分散型台帳と言われる、主体者がいない複数の人間で同時に監視を行うシステムで、一本の鎖の様に情報を改竄できないようにしてつなげていく技術です。)

今は仮想通貨(暗号資産)のイメージが強いブロックチェーン技術ですが、実は様々な用途での活用が検討され始めています。

例えば、製造に関する流れ(サプライチェーン)の透明性です。先に挙げたチョコレートのカカオの様に、消費者から見えない所で行われている不法労働や搾取への対策です。

このような不正を排除し、論理的で公正(エシカル)であることをPRする企業は増えてきています。
欧州では、取引先企業の経営状態や従業員の給与水準などを、個人情報に配慮した上で公開する企業がでてきています。「私たちは公正な取引を行っています」と世間に伝える事で、企業の価値を高めて信頼を得るわけです。

しかし、そうなるとその公開されている情報自体が正しいのかという疑念がでてきます。そこにブロックチェーン技術を使うことで、その情報が正しいものであることを証明することができるのです。

また、発展途上国でみられる土地や不動産登記の不正確さや、金融機関の不安定性、また偽札などに対して、ブロックチェーン技術を用いて〝公正〟にし、それに〝法〟による力を持たせる事で、〝公正な統治〟が可能になるような取り組みが期待されています。

現在は欧州を中心に、SDGsを中心とした規制等を含めたグローバルな〝ルール化〟の動きがあります。その一方で、一部の国では現状の課題・リスクに合わせて、現実的に対応する動きをみせています。

どちらが正しいのかは分かりませんが、ルールをつくり主導する流れと、課題・リスクに合わせて柔軟に変化しようとする動きで、世界が二分化しているようにも見えます。これはある意味、SDGsを中心とする覇権争いになっているのではないでしょうか。

先進国の動きはともあれ、発展途上国の全ての国が、資源、技術、法規のバランスを安定させるために、次の目標17パートナーシップが関連してきます。

17.パートナーシップで目標を達成しよう



〝パートナーシップ〟は、SDGsがこれまでの取り組みと違う、象徴的なワードです。

SDGsにはその前身であるMDGsというものがありました。これは2001年から2015年を期限とした、ミレニアム開発目標です。

MDGsでは①貧困と飢餓・②教育・③ジェンダー・④乳幼児・⑤妊産婦・⑥環境・⑦疫病・⑧パートナーシップの8つに関する目標が設定されました。

しかし、結果としてこの目標はあまり成果をあげられずに、2015年の期限を迎えることになりました。

その原因として、この目標の設定自体が国連と国家、特に先進国だけで定められた事ではないかと考えられます。当時企業や団体などにも協力は求めましたが、それだけでは、世の中が大きく動くことはなかったのです。

SDGsではその反省を踏まえ、目標設定の時点で多くの企業・団体が関わっています。最初から多くを巻き込み、〝みんなでやる〟パートナーシップを最重要としたところが、SDGs〝新しさ〟です。

さて、この17番目の目標での日本の達成率は〝赤点〟になっています。

その原因の一つがODAです。これは国家間の国際援助で、国民総所得(GNI=国の経済規模を表すもの)の0.7%が達成目標額とされています。

日本は総額でみるとODAの貢献度が高い国です。(2019年では世界4位)しかし国民総所得の0.7%を達成できていないため、赤点になっているのです。

国民総所得は、国内総生産GDP)=国家のモノやサービスの付加価値の合計額と、輸出入による海外からの所得を合わせたものの事を言います。

ODAは主に発展途上国への援助として〝インフラの構築〟が目的とされることが多いです。これは主に目標9や、目標10に関わっています。
そしてこれは国家による、国家間格差をなくすための支援ということになります。

企業の動きはどうかというと、グローバル企業によって寄付、設備投資、技術提供などの直接的な支援が行われています。このような動きは、国連が提唱する〝メッセージ〟が影響しているのではないかと考えられます。

・アジアやアフリカの貧困を放置することは、それらの国々の経済発展により得られるはずだった、未来の経済利益をみすみすのがすことになる。

そして欧州で進んでいるのが、〝包摂的〟な取り組みです。
(包摂的とは、通常は関係性のない別のラインの存在を包み込む事です。)

例えば、資源→生産→販売のラインに、資源を豊かにする土壌づくりや、生産者の家族支援、郵送する運送会社の支援など、直接的には関係なくても、間接的に影響してくるものを、プロジェクトなどに取りこむ事を言います。

多くの関係が密接に関わることで、新たな発見、新たな取り組み(イノベーション)が起こることが期待できます。近年では産官学連携など、企業・行政・大学などで取り組む場合も、包摂的な組織とされます。

SDGsの17の目標達成には、技術革新(テクノロジーの進化)や、保全活動(規制・ルール化)だけでは不十分で、包摂的かつ、新たな取り組み(イノベーション)が必要になると考えられます。

それは多様な課題に対し、複合的に解決していかないと、とても2030年の期限に間に合わないからです。(課題にはできる限り早く解決した方がよいものが多くあります。)

ここからは、日本を含め世界で行われる包摂的な取り組みについてメモしていきます。

・台湾のITを活用した、国家と国民が直接つながる情報交流アプリ
現在ITが先進的な台湾では、国家が少数(国民)の声をすくい上げるITツールを開発して活用しています。これは政府と国民のパートナーシップです。

実例として、ある女子高生が、このツールを使用して、プラスチック皿とストローの使用禁止を求める書き込みを行いました。これが署名活動に繋がりその結果、国の政策として紙やサトウキビなどを資源としたものに切り替えたということがありました。

これは政治家でなくても社会が変えられる事の証明となり、個人の課題解決のアイディアに対して、企業・行政・政治家によるパートナーシップによって、課題が解決したと言えます。

・オープンイノベーション デンマークの包摂的な組織の構築
デンマークでは公民連携として、次世代型産官学連携が盛んです。その特徴は、能動的な組織を構築するところです。

公的機関・民間企業・研究機関等からの出向ではなく、正式雇用者として各分野の専門家を集め、企画の運営金から、給与が捻出されるということになります。(日本の産官学連携と比べると、責任が明確な感じです。)

この組織には多様な人材が集まり、縦割りではない組織を構築し、課題を解決することができます。これがオープン・イノベーションの取り組みです。

複雑化した現代社会では、単独企業や組織では課題を解決することが難しいようです。特にスマートシティなど、都市計画ではエネルギー・自然資源・交通などのインフラを始め、産業・農業・漁業・畜産・医療・福祉・教育など、関わる分野が多岐にわたるため、包括的な組織が必要とされるという事です。

・IOE ヨーロッパでの電力の包摂的な取り組み 
EUという連合体の欧州では、特にパートナーシップの動きが活発です。例えばエネルギー(電力等)とIT(AI・ビッグデーターなど)を連動させる、IOE(インターネット・オブ・エナジー)の取り組みが行われています。

これにはフランス、ドイツ、イタリアなど11か国から、電力・情報通信・研究機関などの企業が参画する組織があります。
参画する企業はスウェーデンのエリクソン、ドイツのシーメンスが加わるなど、グローバルなそうそうたるメンバーです。

この組織では、共同技術開発が行われています。これは国際標準化に備えるという目的があります。
世界統一規格が他国で開発される前に、国際標準となる規格・システムを構築してしまおうという事です。これは他国に先駆けようとする世界のエネルギー覇権争いとも言えます。

欧州でこのような取り組みが可能な背景には、EUという組織の存在があると考えられます。EUは、もともとは資源争いを防ぎ、国境をなくし、共通通貨を使い、関税を無くすことなどで、欧州全体の商業を発展させる目的がありました。

EUの設立で移住が盛んになったこともあり、(国毎のメリット・デメリットはいろいろありますが)グローバルパートナーシップにとっては良い効果が生まれたと考えられます。
今後も地域エリア内(東南アジア等)での〝国家間のパートナーシップ〟は、より強化される可能性があります。

ここからは包摂的な取り組み例として、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の海外と国内の例を取り上げます。

・循環型経済(サーキュラーエコノミー)による企業連携(ゴミを宝に変える)
循環型経済の取り組みが盛んなオランダでは、本来は全くつながりのない業界同士をつなげる、廃棄物素材のマッチングプラットフォームが形成されています。

ようするに、ある業界では〝ゴミ〟で、処分費がかかる物が、別の業界へもっていけば資源であり、〝宝〟になるということです。

今後はこのプラットフォームには、ブロックチェーン技術が使われ、製品の原材料・加工情報、試用期間などの使用場所などが記録される、リソース(資材)・パスポートの作成を進めているようです。

リソース・パスポートは、QRコードを読み込めば誰でも、廃棄資源の情報を得ることができ、さらにそれらの情報を活かして、AIによる企業同士のマッチングまで担うようなシステムになるという事です。

今のところの実例としては、オランダの観光で有名なチューリップの業者で、刈り取り費用が大きく負担になっていたところ、チューリップを染料として活用するアイディアが、マッチングにより本格事業化として進められています。

・循環型経済(サーキュラーエコノミー)による黒川温泉落ち葉のたい肥再利用
日本国内でも良い例があります。九州の熊本県の人気温泉地黒川温泉です。この温泉地は、露天風呂と豊かな森が人気なのですが、毎年発生する大量の落ち葉が悩みでした。

そこで各旅館ででる生ごみと、落ち葉を両方を活用するプロジェクトが、農家のプロと資源再利用の専門家とのマッチングによって誕生しました。

それは落ち葉と生ゴミを、肥料として活用するものでした。もともと農業の課題として、野菜栽培に適した肥料が少ないというものがあったそうです。理想の肥料とは、ミネラル、炭素、窒素、微生物がバランスよく仕込まれた物だといいます。

そのため、黒川温泉では落ち葉を発酵させ(微生物)、もみがら(炭素)、生ごみ(窒素)、貝殻・甲殻類の殻(ミネラル)などをまぜることで、農家にとって理想の肥料を創り出して、それを出荷するようになったといいます。

これは黒川温泉の悩みの一つであった落ち葉生ごみ(廃棄資源)が、マッチングによる包摂的プロジェクト〝宝〟に変わった例と言えます。

まとめ

EUのような国家間による共同体構築は、オープンイノベーションの観点から、これからますます進むのではないでしょうか。その理由は、世界が抱える問題があまりに複雑すぎるためです。

実際にSDGs前身の、MDGsの8つの目標に対して、SDGsの目標は17と倍以上になっていることからもそれは感じられます。

このように多くの課題を同時に解決するには、技術革新(テクノロジー)と、新たな取り組み(イノベーション)、仕組みや制度の改正など、柔軟な対応が必要になってくると考えられます。

現代の世の中の仕組みとして基本的には、税金と安全保障と資源は国家が管理し、生産と雇用は企業が担い、政治は政治家(国民)のように、縦割りとなっています。

そのため上記の様に柔軟な対応ができる、包摂的な組織をつくるパートナーシップは、SDGsの17の目標達成のために、もっとも重要になってくると考えられます。


そしてもう一つ、重要なことがあります。国家や組織ではなく、〝個人〟としての取り組みです。

そもそも17の目標があると、それらすべてに対して個人が取り組むのは至難の業です。また、できることに限りがあります。

そのため個人で大切なのが、何らかの形で支援する事です。支援の形は様々で、寄付をしたり、人力として手伝ったり、また、例えば応援するだけでもいいということです。

真剣に取り組んでいる人がいたら、SNSでフォローしたり、コメントを入れたり、YOUTUBEに登録したり、一声かけるだけでもいい訳です。

新しい取り組みが正しくない場合には、頭ごなしに反対せずに、いい方法を一緒に考えてあげる事も、イノベーションを盛んにするために必要な〝個人〟の取り組みです。

デンマークでは、〝グローバル(世界のこと)に考え、ローカル(地域のために)に行動する〟という考え方があるそうです。

これはグローバルな行いが、私たちが暮らす地域に、いい効果をもたらすことはまれだが、地域の為の行いが、あらゆる地域で同時多発的に起こることで、グローバルな課題解決につながるということです。

最後になりますが、SDGsの目的は究極的には二つだと私は考えています。1.争い(戦争・テロ)をなくすこと、2.地球に住み続けられるようにすること、です。SDGsの17の目標が全て達成されたなら、この大きな二つの目標が実現するのかもしれません。

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